はじめての義手:断端・健側のケア
皮膚のケア
皮膚がザラザラやウロコのようになったりするのを防ぐために、ぬるま湯と肌に優しい石鹸で、毎朝と夕方に洗ってください。その後、完全に乾かし、丁寧に柔らかいもので軽くたたくようにして拭きます。肌に優しいクリームを塗り、柔軟な肌を保つようにしてください。
もし断端の皮膚にしわや傷ができてしまった場合には、感染を防ぐために集中的なケアが必要になります。このケアについては、リハビリテーションチームからアドバイスを受けてください。さらに、断端をケアする際に、傷、褥瘡や水ぶくれがないか確認してください。このような症状が見つかった場合には治療を受けなければなりません。断端の裏側も鏡を使用して確認してください。定期的な断端のマッサージと丹念な傷口のストレッチも重要です。
また、断端を洗った後は、断端の皮膚がふやけるため、普段より装着が難しくなることに注意を払ってください。
皮膚の感覚を鈍くする
断端の皮膚は、手術後はとても繊細で敏感になります。その感覚を軽減する方法です。
軟らかいブラシやマッサージボールを使って、皮膚の敏感な場所を軽くこすったり、ポンポンと軽くたたいたりします。これにより感覚を鈍くさせます。また断端を粗目のタオルなどで断端を軽くなでることも有効です。
快適に感じる材質のみ使用し、断端の末端から身体に向かって行ってください。
断端を衛生的に保つことは、傷の治癒にも非常に重要です。断端は毎日肌に優しい石鹸で洗ってください。
傷のケア
ほとんどのケースにおいて、切断による傷は3~4週間で塞がり、傷跡になっていきます。しかし外観では傷跡が良くなったように見えていても、それは傷跡の組織の色がほんの少し変わっただけで、傷の完治までには未だかなり時間がかかります。
断端は油分を出す能力が落ちることがあります。手術直後から断端の保湿に気を配ってください。無香料のクリームをお勧めします。このようなケアは、傷跡の組織に柔軟性をもたせ、同時に弾力性を持たせることは非常に重要です。
さらに適切なケアは義手ソケット内で起こる断端の痛みを防いでくれます。そのため、これらのケアは義手を装着するためにも非常に重要です。
早期の圧迫療法も傷の治癒には重要です。シリコーンライナーで断端全体を圧迫することは、傷跡の組織が大きくなることを防ぐのに非常に有効です。
幻肢痛
身体の失った部分をあるように感じることを幻肢と言います。この感覚は誰にでもあるもので、一般的にはしばらくすると消失します。
人よっては、長い期間、幻肢痛に苦しめられる場合もあります。幻肢痛を和らげるためには、いくつかの方法があります。
手術によって長すぎたり骨に当たるであろう神経や血管を短くしたり、痛みをブロックする治療法もあります。また、弾性包帯を巻くことでしばしば幻肢痛を和らげることが出来ます。義手を装着することも有効です。
鏡療法が有効とも言われています。鏡療法では健側肢と切断肢の間に鏡を置き、健側肢だけを見るようにします。そして健側肢を動かしながら切断肢の動きをイメージします。なぜ鏡による視覚イメージが有効かは定かではありませんが、多くの切断者がこの治療法により改善しています。
エクササイズの準備
治療の次のステップへよりよい準備をするため、身体の可動性を保ち、エクササイズを行い、体幹、腕、脚の筋力を強化することを強くお勧めします。
セラピストが回復に役立つエクササイズや、切断部分に近い関節の動かし方を出来る限り教えてくれます。
断端のストレッチ
例えば肩や肘などの、断端周りの筋肉や関節はストレッチを行う必要があります。
関節の動きが制限されている場合、タオルを使って他動的に動かす練習を行うこともできます。継続的に行い、関節の最大可動域を取り戻すことはとても重要です。
健側を使いこなす
健側の訓練は、切断側が利き手か、そうでないかによります。
細かい運動スキル、器用さと筋力トレーニングを行います。健側をより使いこなすことができれば、日常生活動作を可能にし、自分自身で身の回りのことが出来るようになります。字を書いたり、歯を磨く動作練習は非常に有効です。
体幹のストレッチ
腕を失うという事は、同時に切断肢側の重さも減るという事です。これは体のバランスの崩れや、姿勢の悪化につながります。
体幹のバランスを維持し、健康的な背骨を保つことを意識する必要があります。
体幹のエクササイズは身体のバランスを保つことに大いに役立ちます。義手の適合の前に特に意識することで、身体の歪みを防ぐことができ、義手への適応がしやすくなります。
義手の使用を開始すると、義手の重さが失った腕の重さを補います。既に身体に歪みが生じてしまった場合、その歪みを修正し、さらなる進行を防ぐためのエクササイズを行います。体幹の安定とバランスの良さは義手の扱いを容易にします。